名作インタビュー(7月4日 小雨)

まんがStyleさんの企画『あのまんが家が何度も読んだこの名作』ということで、3本漫画を挙げさせていただきました。『少女・ネム』と『菫画報』と『加藤洋之&後藤啓介作品全般』です。好きな漫画は色々ありますが、あえてこの3本を選んだのは、特に中高生の頃に愛読したものであることと、現在も比較的入手が容易であることです。なので単行本が出ていない沓澤龍一郎さんや博内和代さんの作品群は外しました。またパトレイバーなど、週刊少年誌で連載されたメジャー作品も、今回はあえて避けました。

『少女・ネム』は漫画家を目指す少女の物語で、カリブさんの原作も大変面白いのですが、木崎ひろすけさんのその絵が、もう、本当にもの凄くて。トーンを使わない線とベタだけで構成された画面、自由自在で見事な構図の数々、キャラクターから細部の小物に至るまでのデフォルメのうまさ。当時から凄まじいと思っていましたが、業界の隅っことはいえ絵を描く人間になってから見ると、ますます凄さがよくわかるようになり、あらためて、溜息が出ます。

『菫画報』は当時月刊アフタヌーンを買うようになった頃、雑誌を読んで一番最初に「あ、これ面白い。単行本買おう」と本屋に走った漫画です。新聞部という文化系の部活を舞台に巻き起こるなんてことない日常と、なんてことある非日常の毎日。身長175センチ近いけれども心は乙女な女子高生・星之スミレをはじめとした軽妙なキャラクターが織りなす洒脱な会話が魅力の作品です。

『加藤洋之&後藤啓介作品全般』というのは、加藤さんと後藤さんの二人組のイラストレーターの方の一連の作品郡です。繊細な筆致と淡い色使いが大変魅力的で、またそうした絵柄で描かれる漫画の内容が実にSFしていて、夢中になりました。画集サイズの作品集が何冊も出ているのですが、あえて一本挙げるとしたら、『トーランドットの錬金術師』に収録されている『OXID MUSIC -酸化した音楽-』がとても好きです。

まだ読んだことのない方々に、この紹介が作品に触れる機会になれば幸いです。 


※2021年現在、インタビュー記事は消えてしまっているようです。

ジゼルとエステル

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