「あのエロい映画なんだっけ?」

5月25日発売の月刊アクション7月号にて、読み切り「あのエロい映画なんだっけ?」が掲載されます。もともと昨年末ごろに打ち合わせをして、締め切りが春なので、まあその頃には他の仕事も片付いてて時間あるやろと思ってたら、全然片付かずに締め切りが迫ってきたので急いで描いて、なんやかんやでこっちが先に発表される形になりました。ままならないですね。


ギャル子の4ページでネタをバカスカ詰め込む作風に自分が慣れてしまった結果、「絶対にそのページ数では収まらないような題材・ネタ量を、パズルのように組み合わせて無理やり成立させる」というのが、今の自分の漫画の作り方になってしまっています。なので、今作が特に気負った内容というわけではなく、いま短編の依頼がきたらどの仕事であろうと、同じかそれ以上の濃度の作品になるかと思います。これは本当に良くも悪くもで、「何でもいいから、サラっとした軽いやつお願いします」みたいのだと描けないんですよね、逆に。


今回、ネームに関してはほとんど苦労せず、特に後半は登場人物たちが勝手に行動しはじめたので、それをなぞって描くだけでした。作中に出てくる条件に合った映画名を選別する方が難しかった。そうかと思えば逆に、「前々から考えているけれども、どう揉んでもうまくいかないなあ……」みたいな題材もあったりします。ナイツ塙さんの著書『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』の中で、「練習しなくてもいいネタは、ネタそのものがおもしろいし、そもそも自分たちに合っているんです。逆に練習しなければならないネタは、ネタがつまらないか、自分たちに向いてないんです。」というくだりがあって、これ漫画のネームでもそうなんじゃないかと思います。うんうん唸っていじくりまわすネームって、要するに面白くないから苦労していじくる必要があるわけだし、そもそもが自分に向いてないからうまくいかない。うまくいったな〜というネタは、だいたい最初から最後まで一瞬で思いついて、はじめから面白いんですよね。そういう意味では今回のネタは、自分に向いたネタだったんでしょうね。


最近はシャーロック・ホームズの原作にハマっていて、新潮社文庫の延原訳を読み漁っています。もともとえのころ工房さんが作られた『シャーロック・ホームズ人物解剖図鑑』という本がたいそう面白く、これで取り扱っている3冊(「緋色の研究」「四つの署名」「シャーロック・ホームズの冒険」)だけでも読むか〜と思って読み出したら、あれよあれよと読み進めてしまいました。いまは「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」を読んでいて、あと残すところ「恐怖の谷」と「シャーロック・ホームズの事件簿」の2冊だけになってしまいました。かなしい。でもこれ今だからまだマシで、当時のコナン・ドイルと同時代の読者なんかは、人気絶頂の時にとつぜんホームズが死んで、そこから復活まで数年待たされたりだの、その後も数年に1本発表されるペースの短編を待ち続けたりだの、大変だったなあと察せられます。そのへんの話もまた、きちんとシリーズ読了したあとに、ひとつまとめて書きたいですね。そういえばホームズの映画って、最近だとロバート・ダウニー・Jr.のやつになるんでしょうけど、自分的に記憶に残ってるのって『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』なんですよね。あれまた観てみたいな。


ともあれ「あのエロい映画なんだっけ?」お読みいただければ幸いです。そしてまた次の漫画でお目にかかれるよう、片付いてなかった仕事の方をがんばります。



ジゼルとエステル

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