竹本泉とそばかす(8月1日 曇)
以前アシスタント先で「マニアックな話でもいいから」と話を振られて困った時、その作家さんが竹本泉ファンだった事を思い出し、こんな話をした事があった。「竹本さんの最近載った読み切りで、ものを考えずに言葉に出してしまう女の子、葛飾ふじ美ちゃんって言うんですけど、その子の話がすごく好きなんですけど、特に、それに出てくる男の子の小室崎くんっていうのがいて、彼の立ち姿が凄く良いんです。すらっと立った中に、絶妙な身体の傾きが入っていて、その1コマで彼の性格や人となりが表されているというか、とにかく凄く良い傾きなんですよ!」案の定、作家さんも一緒にいたアシさんもわけがわからぬといった表情で、その場の雰囲気がすごく悪くなったのだけれど、それはそれとして、言わんとしている事はつまり、「よみきりもの」10巻の89ページの小室崎くんの、ひょいと傾げた姿がたまらない、という事である。
竹本泉作品はあまりに数が膨大で、一にわかファンにとってはとても把握しきれるものではないのだけれど、もうひとつだけ印象に残っているものを挙げるとすれば、「乙女アトラス」のハルビの胸元である。ハルビというのは三つ編みにソバカスの女の子なのだけれど、彼女じつは、胸元にもソバカスがある。そこが良い。すごく良い。何がどう良いんだとか聞くな、良いから良いんだ。ともあれそのハルビの胸元に作者のすごいこだわりを感じたのだけれど、しかし、後から描いたであろう単行本の口絵に載っているハルビの胸元にはソバカスが無かったりして、あれ、実は大したこだわりでも無いのかもしれないと思ったりした。
ともあれ、いつかソバカスの女の子が出て来る漫画を描いて、もしもその女の子が胸元をあらわにするような機会に恵まれるのであらば、絶対に、もう絶対にソバカスを付けてやろうと、密かに企んでいる次第である。
※のちに「乙女アトラス」の続刊を読んだら、あとがきで胸元のソバカスは「こだわりポイント」であるとの記載があった。
0コメント